「AWS SAA 合格率」で検索すると、自信たっぷりの数字が並びます。しかしどの数字も、出典をたどっていくと必ず途中で行き止まりになります。 これは書き手が雑だからではありません。それらの記事がほとんど触れない一つの事実の当然の帰結です。すなわち、AWS は認定試験の合格率を公表していないということです。 本記事は、この「無い」という事実そのものを主題にします。SAA-C03 の採点について AWS が実際に公表している内容を正確に整理し、存在しない合格率が仮にあったとして何を教えてくれ、何を教えてくれないのかを説明し、そのうえで実際に行動に移せる代替指標 — 自分の演習結果から測れる基準線 — を提示します。
AWS は SAA-C03 の合格率を公表していません。「合格率 約 XX%」と書かれた数字は、すべて公式出典を持たない推測値です。 公表されているのは合格スコア 720 / 1000 だけ。判断はこちらを基準に行ってください。
問題の構造は、2 つのカテゴリに分けて並べると一目で分かります。下表の左側はすべて AWS の公式試験ガイドおよびポリシーページに記載がある項目です。 右側はどの公式資料にも存在しません。つまり、右側の数字を引用している記事は、AWS 以外の何かを引用しているということです。
| 公式に公表されている | 内容 | 公表されていない |
|---|---|---|
| 合格スコア | 720 / 1000 | 合格率 (受験者に占める合格者の割合) |
| スコアレンジ | 100〜1,000 | 受験者数・受験者の属性 |
| 採点方式 | 補正採点 (スケールドスコア) | スコアと正答数の換算表 |
| 分野別の足切り | 無し | 分野別の平均得点 |
| 総問題数 / 採点対象 | 65 問 / うち 50 問 | 非採点 15 問の出題位置 |
| 試験時間 | 130 分 | 受験者の平均所要時間 |
| 出題形式 | 択一選択・複数選択の 2 種類のみ | 形式ごとの正答率 |
ここで、ならしてしまわずに正直に書いておくべき食い違いが 1 つあります。AWS 認定 FAQ には、AWS が合格スコアを公開していない旨、および合格スコアはコンテンツの更新にともなう試験形式の変更を反映して更新されることがある旨の記述があります。 一方で SAA-C03 の試験ガイド には 720 という数字が明記されています。 両者は完全には整合しておらず、FAQ の記述のほうが現行ガイドより古い可能性があります。本記事はこの矛盾を断定的に解決しません。 ただし、この記述が何の根拠にならないかは明確です。FAQ が論じているのは合格スコアであって合格率ではありません。 「AWS は合格率を公表しないと明言している」という形で引用するのは誤引用です。正確には、合格率について公式が言及した文書自体が存在しないのです。
仮に AWS が合格率を公表したとして、その数字は何を意味するでしょうか。分母は、ある期間に SAA-C03 を受験した全員です。 そこには初回受験者も 3 回目の受験者も、本番運用歴 5 年のエンジニアも、研修の課題として受けている学生も混ざっています。 プロモーションの打ち方が変われば、企業研修の送り込み方が変われば、受験国の構成が変われば、試験そのものは何も変わっていないのに数字が動きます。
もう 1 つ、AWS の採点方式に固有の理由があります。合格基準は統計的に較正された問題の難易度に対して設定されており、補正採点 (スケールドスコア) はまさにそのための仕組みです。 難易度の異なる問題セットに当たった 2 人の受験者が、同じ基準で評価されるようにするためです。 つまり適切に較正された試験では、基準は一定に保たれ、観測される合格率のほうが受験者集団に応じて揺れます。 合格率という数字が主に測っているのは「誰が受けに来たか」であって、試験の難しさではありません。 だからこそ、あなたが本当に下したい判断 — 「今、受験を予約していいのか」 — の材料としては、そもそも役に立たないのです。
合格率の代わりに使うのが以下の指標です。この表は NicheeLab 編集部の目安であって、AWS の公式基準ではありません。 出典の無い数字には出典が無いと書く、というのが本記事の主張そのものなので、ここも明示しておきます。 基準は当社の AWS 問題セット (2,225 問) の設計と採点の実務から置いたもので、「受験を予約してよいか」という判断の形に落としてあります。
| 指標 | 見送り | 予約してよい | 安全圏 |
|---|---|---|---|
| AWS 公式の無料練習問題 (20 問) の正答率 | 12 問未満 | 14〜16 問 | 17 問以上 |
| 65 問模試 (初見セット) の正答率 | 70% 未満 | 75〜80% | 85% 以上 |
| 模試の安定度 (直近 3 セットの振れ幅) | 振れ幅 15pt 以上 | 振れ幅 10pt 以内 | 最低点が 85% 以上 |
| 分野別の偏り (最下位分野の正答率) | 60% 未満 | 全分野 70% 以上 | 全分野 80% 以上 |
| 65 問の解答所要時間 (試験時間は 130 分) | 130 分で解き切れない | 100〜115 分で完答 | 90 分で完答し 30 分以上見直せる |
この 5 行のうち 2 行は他より重要なので、補足しておきます。安定度は、単発の高得点よりはるかに意味があります。1 セットで良い点が出たことが教えてくれるのは、そのセットとの相性であって実力ではありません。 3 セットが 10 点幅に収まって初めて、その数字を作っているのが標本の偏りではなく知識だと言えます。分野別の偏りが重要なのは、SAA-C03 に分野別の足切りが無いからです。「足切りが無いなら偏っていてもいい」と読めますが、実際は逆です。 足切りが無いということは合否が加重合計で決まるということなので、55% で止まっている分野は、他がどれだけ強くても総合点の上限を静かに押し下げます。 表の 1 行目に無料の公式練習問題を置いたのは、無料で、かつ公式の言い回しに較正されているからです。ただし 20 問は受験判断を単独で支えるには標本が小さすぎます。点数ではなく言い回しの確認として使ってください。
自社データからもう 1 つ較正の材料を。当社の SAA-C03 練習問題 400 問の難易度分布は easy 122 / medium 231 / hard 47 で、medium が約 58% を占めます。合否が決まるのはこの medium 帯です。 easy では高い正答率が出るのに medium で崩れるタイプの人は、easy 寄りのセットを解くと総合正答率が実力より高く出ます。 平均値だけでなく正答率の形を見てください。問題集を問題数ではなく難易度構成で選ぶべきだと当社が繰り返し書いているのも、同じ理由です。
ここで扱う AWS 認定 3 試験は、いずれも合格率を公表していませんが、合格スコアはすべて公表されています。 そしてその差は、合格率よりよほど多くのことを教えてくれます。ティアが上がるにつれて合格スコアが上がり、採点対象の比率も上がります。
| 項目 | CLF-C02 | SAA-C03 | SAP-C02 |
|---|---|---|---|
| 合格スコア | 700 / 1000 | 720 / 1000 | 750 / 1000 |
| スコアレンジ | 100〜1,000 | 100〜1,000 | 100〜1,000 |
| 総問題数 | 65 問 | 65 問 | 75 問 |
| 採点対象 | 50 問 | 50 問 | 65 問 |
| 非採点問題 | 15 問 | 15 問 | 10 問 |
| 試験時間 | 90 分 | 130 分 | 180 分 |
| 受験料 | 15,000 円 / 100 USD | 20,000 円 / 150 USD | 40,000 円 / 300 USD |
| 分野別の足切り | 無し | 無し | 無し |
| 合格率の公表 | 無し | 無し | 無し |
700 / 720 / 750 という差は、そのままティアの信号として読めます。Foundational から Associate で 20 点、Associate から Professional でさらに 30 点、基準が厳しくなります。 当社の問題データも別の角度から同じ勾配を示しています。各 400 問の練習プールにおける hard の比率は、CLF-C02 が約 7%、SAA-C03 が約 12%、SAP-C02 が約 31% です。 円建て価格については補足が必要です。AWS は FAQ で円建ての受験料が毎年 4 月に更新されるとしており、また掲載価格が税込か税別かは公式ページに明示がありません。上表の金額は「掲載価格」として扱い、最終的な請求額と同一視しないでください。 3 試験の比較の全体像は AWS 資格の合格率 で扱っています。
合格率を検索している人が本当に知りたいのは、たいてい次の問いです。「何問まで間違えても合格できるのか」。 答えは「誰にも言えない」であり、その理由は秘匿されているからではなく、仕組み上そうなっているからです。
この 5 点を実務に翻訳すると、ルールは 1 つに収束します。余裕は試験会場ではなく演習の段階で作るということです。 どの問題が採点対象かを知りようがない以上、自分で動かせるレバーは「セット全体の正答率を上げる」しかありません。 初見の 65 問模試で安定して 80% を出せる受験者にとっては、非採点の 15 問がどれであるかはもはや問題になりません。 これが、合格率という数字に対する実務的な代替のすべてです。そこに到達する手順は AWS SAA の勉強方法、1 回目がうまくいかなかった場合の立て直しは AWS SAA に落ちた人がまずやること で扱っています。
この手の数字はこれからも目に入り続けます。そこで短いフィルタを用意しておきます。合格率を主張する情報に出会ったら、次の 3 点を確認してください。
念のため付け加えると、このフィルタは「出回っている数字がすべて間違っている」という主張ではありません。実態に近いものもあるでしょう。 問題は、どれが近いのかを判別する手段が読者側に無いことです。検証できない数字は、計画の土台にできません。 一方で、合格スコア・問題数・採点対象と非採点の内訳・試験時間・再受験ポリシーは、すべて公表され、検証でき、そのまま行動に移せます。判断はこちらで組み立ててください。
AWS SAA (SAA-C03) の合格率は何 % ですか?
公表されていません。AWS は認定試験の合格率を公開しておらず、合格率を掲載した公式ページも存在しません。したがって『AWS SAA の合格率は約 XX%』と書かれている情報は、出典が公式である可能性がなく、すべて推測値または限定的なアンケート結果です。数字の大小に意味を求めるより、公表されている合格スコア 720 / 1000 と、自分の模試での安定度を判断材料にするほうが実務的です。本記事では合格率の代わりに使える自己判定指標を表で示しています。
なぜ AWS は合格率を公表しないのですか?
AWS 自身が理由を明示した文書は確認できません。ただし公式 FAQ は、合格スコアについて『コンテンツの更新にともなう試験形式の変更を反映して更新されることがある』という趣旨を述べています。これは合格『スコア』に関する説明であって合格『率』の説明ではないため、そのまま理由として引用するのは正確ではありません。一般論として、試験の合格基準は問題ごとの難易度を統計的に調整したうえで設定されるため、受験者集団の構成が変われば合格率も変動します。母集団が固定されていない指標を公表しても比較可能性が無い、というのが試験運営上の一般的な考え方です。
720 点は 65 問中何問正解に相当しますか?
換算できません。SAA-C03 のスコアは 100〜1,000 の範囲で表示される補正済みスコア (スケールドスコア) で、正答率をそのまま百分率に直したものではありません。加えて 65 問のうち採点対象は 50 問だけで、残り 15 問は結果に影響しない非採点問題です。どの 15 問が非採点なのかは受験者に開示されないため、『50 問中 36 問正解で合格』のような換算表を作ることは原理的に不可能です。この仕様の実務的な帰結は、非採点問題を見分けられない以上、65 問すべてを本気で解く以外に方法が無いということです。
分野別の足切りはありますか? 苦手分野を捨てても合格できますか?
分野別の足切りはありません。合否は全体の補正スコアが 720 / 1000 に達したかどうかだけで決まります。ただし『足切りが無い』ことは『捨て分野を作ってよい』ことを意味しません。SAA-C03 の配点は、セキュアなアーキテクチャの設計 30% / レジリエントなアーキテクチャの設計 26% / 高パフォーマンスなアーキテクチャの設計 24% / コストを最適化したアーキテクチャの設計 20% で、最も小さい分野でも全体の 5 分の 1 を占めます。1 分野を丸ごと落とすと、残り 3 分野でほぼ取りこぼしなしが必要になり、現実的な戦略にはなりません。
落ちた場合、いつ再受験できますか? 回数制限はありますか?
不合格から 14 日 (暦日) 経過すれば再受験でき、年間の受験回数に上限はありません。ただし受験のたびに全額の受験料が必要です (SAA-C03 は 20,000 円 / 150 USD)。合格した場合は逆に、同じ試験を 2 年間は受験できないというルールがあります。予約の変更 (リスケジュール) は 2 回まで可能です。不合格後の具体的な立て直し手順は、当社の『AWS SAA に落ちた人がまずやること』で 14 日間の日割りプランとともに解説しています。
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NicheeLab編集部
データエンジニアリング・クラウド資格の専門家。Databricks・Snowflake等の認定資格を保有し、実務経験に基づいた問題作成・解説を行っています。NicheeLab運営。
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