第 0 部 第 6 章 読了目安 5 分

壊れる前提で考える

第 2 章で、サーバーは普通のコンピューターだと書きました。普通のコンピューターなので壊れます。壊れることを前提にしたまま、止めないための考え方を扱います。

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第 0 部の全 8 章はそのまま読めます。資格の話は出てきません。

この章で学ぶこと

  • 単一障害点がどこにあるか見つけられる
  • 止めない工夫と戻す工夫の違いを説明できる
  • バックアップが満たすべき条件が分かる
  • どこまで備えるかの決め方が分かる

この章に出てくる用語

可用性
使いたいときに使える状態でいられる度合いのこと。壊れないことではなく、壊れても使い続けられることを指します。1 台ではなく複数台で受けるのが基本の手になります。どこまで高めるかは、止まったときに何が困るかで決まります。
単一障害点
そこが止まると全体が止まってしまう箇所のこと。1 台しかないサーバーや、1 本しかない回線がこれにあたります。可用性を考えるときは、まずこの箇所を探すところから始めます。構成図の部品を 1 つずつ指さして確かめるのが、いちばん確実な見つけ方です。
冗長化
同じ役割のものを複数用意して、片方が止まっても続けられるようにすること。ただし数を増やすだけでは足りず、同時に止まらないように離して置くことがセットになります。離すほど強くなりますが、そのぶん通信は遅くなります。
バックアップ
元のデータが失われたときに戻せるよう、別の場所に取っておく複製のこと。壊れたときに使い続けるための仕組みではなく、壊れたあとで戻すための仕組みです。目的が可用性とは違います。
SLA
提供元が約束する稼働率のこと。99.9% のような数字で示され、下回ったときは料金の一部が戻ります。止まらない保証ではなく、止まったときの扱いを決めた約束だという点に注意が要ります。

6-1 1 台だと何が困るのか

第 2 章で、サーバーは普通のコンピューターだと書きました。普通のコンピューターなので壊れます。ディスクも壊れますし、電源が落ちることもあります。

ウェブサイトをサーバー 1 台で動かしているとしましょう。その 1 台が止まるとサイトは落ちます。止まる理由は故障だけではありません。OS の更新で再起動が要ることもあれば、ラックの電源が落ちることもあります。

このように、そこが止まると全体が止まる箇所を単一障害点と呼びます。可用性を考えるときは、まずこれを探すところから始めます。

探し方は「ここが止まったら?」

構成図の部品を 1 つずつ指さして「これが止まったら動くか」と聞いていくだけです。答えが「止まる」なら、そこが単一障害点です。サーバーだけでなく、回線・電源・データベース・DNS も同じように見ます。

確認 — 穴あけ 1 問

0 / 1

空欄を押すと選択肢が出ます。間違えても減点はありません。

そこが止まると全体が止まってしまう箇所を と呼ぶ。

6-2 止めないための考え方

単一障害点を見つけたら、同じ役割のものを複数用意します。これを冗長化と呼びます。ただし、数を増やすだけでは足りません。

2 台にしても、同じラックに並べていたら、ラックの電源が落ちたときに両方止まります。第 3 章の表をもう一度見てください。「2 台ある」ことと「別々に壊れる」ことは別の話です。

どこまで離すか耐えられること通信の速さ
同じラックの中1 台の故障いちばん速い
同じ建物の別のラックラックごとの停電ほぼ変わらない
別の建物(可用性ゾーン)建物ごとの障害わずかに遅い
別の地域(リージョン)地域全体の災害はっきり遅い

表 6-1 離すほど強くなり、そのぶん遅くなる(第 3 章の表の読み直し)

振り分ける仕組みが要る

複数台用意しても、利用者がどれに行けばよいか分からなければ意味がありません。手前に振り分け役を置いて、生きている台にだけ通すようにします。止まった台を自動的に外す役目も、ここが持ちます。

SLA は「止まらない保証」ではない

提供元が示す 99.9% のような数字を SLA と呼びます。下回ったときに料金の一部が戻る、という約束です。止まらないことの保証ではありません。しかも多くの場合、1 台だけで動かしていると SLA の対象になりません。

確認 — 穴あけ 2 問

0 / 2

空欄を押すと選択肢が出ます。間違えても減点はありません。

サーバーを 2 台にしても、同じ に並べていると両方同時に止まることがある。

SLA は、提供元が示す についての約束である。

6-3 戻すための考え方

冗長化は「壊れても使い続ける」ための工夫です。これとは別に、「壊れたあとで戻す」ための工夫が要ります。バックアップです。

この 2 つは目的が違います。冗長化していても、間違えてデータを消してしまったら、消えたものは全部の複製から消えます。複製は「同じ状態を保つ」ための仕組みなので、間違いも正確に写すからです。

冗長化バックアップ
目的壊れても使い続ける壊れたあとで戻す
守る相手機器の故障・停電誤操作・データの破損・ランサムウェア
止まる時間ほぼゼロ戻す作業のぶんかかる
古い状態に戻せるか戻せない戻せる

表 6-2 別の目的を持つ 2 つの備え

バックアップが満たすべきこと

  1. 別の場所にあること —— 元と同じ場所に置くと、その場所が失われたときに一緒に消えます。
  2. 戻せることを確かめてあること —— 取れているだけでは不十分です。戻す練習をしていないバックアップは、要るときに戻せません。
  3. いつの状態まで戻れるか決めてあること —— 1 日 1 回なら、最悪 1 日ぶん失います。どこまで失ってよいかを先に決めます。

いちばん多い失敗

取れていると思っていたら取れていなかった、戻そうとしたら戻し方が分からなかった。この 2 つです。どちらも、戻す練習を一度もしていないことが原因で起きます。

どこまで備えるかは、止まったときに何が困るかで決まります。社内の資料置き場と、決済を受け付けるサイトでは、かけるべき手間が違います。全部に最高の備えをすると費用が見合いません。

確認 — 穴あけ 1 問

0 / 1

空欄を押すと選択肢が出ます。間違えても減点はありません。

誤ってデータを消してしまったとき、 では救えない。

この章のまとめ

  1. まず単一障害点を探す。「ここが止まったら動くか」と聞いていく
  2. 冗長化は数を増やすだけでなく、どこまで離すかがセット
  3. SLA は止まらない保証ではなく、下回ったときの料金の約束
  4. 冗長化は使い続けるため、バックアップは戻すため。目的が違う
  5. 戻す練習をしていないバックアップは、要るときに戻せない

この章で扱わなかったこと

可用性セットとゾーンの製品仕様 / SLA の具体的な数字 / 復旧手順の設定項目

これらは資格の範囲に入ってから扱います(可用性とバックアップの章)。

この章の根拠

AWS Well-Architected フレームワーク(信頼性の柱)信頼性の設計原則(Microsoft Azure Well-Architected)

最終確認 2026-10-04 / 対応バージョン DEA 2026-05-04 改訂版