第 11 章 コストを最適化したアーキテクチャの設計(20%)

ストレージのコスト

この章で学ぶこと

  • アクセスのオプション(リクエスタ支払いのバケットなど)
  • AWS のコスト管理のサービス機能(コスト割り当てタグ、複数アカウントの請求)
  • 適切なユースケースを伴うコスト管理ツール(Cost Explorer、AWS Budgets、Cost and Usage Report)
  • バックアップ戦略/データのライフサイクル/ストレージのアクセスパターン
  • ブロックストレージのオプション(HDD・SSD のボリュームタイプ)

この章に出てくる用語

リクエスタ支払い(Requester Pays)
データを取り出す側が転送料を払う設定。 ふだんはバケットの持ち主が払うが、これを有効にすると、ダウンロードした人が自分のアカウントで払う。大きなデータセットを公開して配りたいが、転送料は負担したくないというときに使う。匿名アクセスは使えなくなる。

S3 には複数の保管クラスがあり、取り出しやすさと値段が逆の関係にある。設問は「どれくらいの頻度で読むか」「取り出しに何分待てるか」を書いてくる。

図 11-1 S3 のストレージクラス
図 11-1 S3 のストレージクラス
クラス向く場面最低保管期間取り出し
S3 標準よく読む無しすぐ
Intelligent-Tiering読む頻度が読めない無しすぐ(階層により異なる)
標準 − IAたまに読むが、読むときはすぐ要る30 日すぐ(取り出し料あり)
1 ゾーン − IA再作成できるデータ。1 つの AZ のみ30 日すぐ(取り出し料あり)
Glacier Instant Retrievalめったに読まないが、読むならすぐ90 日ミリ秒
Glacier Flexible Retrievalめったに読まない。待てる90 日数分〜数時間
Glacier Deep Archiveほぼ読まない。最も安い180 日12 時間〜

試験では

最低保管期間より早く消すと、残り期間ぶんの料金が請求される。「30 日以内に消えるデータを標準 − IA に置く」という選択肢は、一見安そうに見えて逆に高くなる。この型は頻出。

補足

1 ゾーン − IA は 1 つの AZ にしか置かない。標準 − IA より 2 割ほど安いが、その AZ が失われるとデータも失われる。「再作成できる派生データ(サムネイル・変換結果)」のように消えても作り直せるものにだけ使う。

クラスを手で付け替えるのは現実的ではない。自動で移す仕組みが 2 つある。

図 11-2 ライフサイクルと Intelligent-Tiering
図 11-2 ライフサイクルと Intelligent-Tiering
ライフサイクルルールIntelligent-Tiering
決め方日数で決める(30 日経ったら IA へ)実際のアクセスを見て自動で移す
向く場面アクセスの傾向が分かっている読む頻度が読めない・ばらばら
追加料金無し(移行のリクエスト料はかかる)オブジェクトごとの監視料
取り出し料クラスによる無し

ライフサイクルには消すルールも書ける。期限切れの削除、古いバージョンの削除、未完了のマルチパートアップロードの後始末だ。

試験では

失敗したマルチパートアップロードの断片は、放っておくと課金され続ける。「身に覚えのない S3 の料金がある」という設問の答えがこれで、ライフサイクルで自動削除するルールを入れるのが対策。

図 11-3 EBS のコストを下げる手
図 11-3 EBS のコストを下げる手
手効果注意
gp2 を gp3 に替える同じ性能でおよそ 2 割安い停止せずに変更できる
順に読むだけのものを HDD(st1 / sc1)へ大きく下がるランダムアクセスには向かない
使っていないボリュームを消す付けていなくても課金されるEC2 を終了してもボリュームが残ることがある
スナップショットを整理する増分とはいえ溜まるData Lifecycle Manager で自動化できる
古いスナップショットをアーカイブ階層へさらに安くなる復元に時間がかかる

補足

アタッチしていない Elastic IP には課金がある。EC2 を消したのに IP を解放し忘れている、という形で請求に残る。ストレージではないが、同じ「使っていないのに払っている」型として一緒に覚える。

サービスコストを下げる手
Amazon EFSライフサイクル管理で IA クラスへ自動移動。1 ゾーンクラスを選ぶ
Amazon FSx必要な容量とスループットを見直す。デプロイタイプ(シングル AZ)を選ぶ
Amazon S3ストレージクラスとライフサイクル(前節)

最後に、コスト管理の道具を役割で分ける。第 4 部のどの章でも同じ道具が出てくるので、ここでまとめて覚える。

図 11-4 コスト管理の道具
図 11-4 コスト管理の道具
道具役割使う場面
AWS Cost Explorer見る過去の傾向をグラフで見る。将来の予測も出せる
AWS Budgets知らせる・止めるしきい値を超えたら通知。アクションを紐づけられる
Cost and Usage Report(CUR)明細最も細かい行単位のデータ。分析は Athena などで
コスト割り当てタグ配分する部署・プロジェクトごとに費用を分ける
AWS Compute Optimizer適正化過剰なインスタンスサイズを指摘する
AWS Trusted Advisor点検コスト・性能・セキュリティなどの定型チェック

試験では

「予算を超えたら知らせたい」は Budgets、「どこにいくらかかったか見たい」は Cost Explorer、「明細を自分で分析したい」は CUR。3 つが選択肢に並ぶので、動詞(知らせる/見る/分析する)で選ぶ。

補足

複数アカウントを Organizations でまとめると、一括請求(Consolidated Billing)になる。使用量がアカウントをまたいで合算されるので、ボリューム割引やリザーブドインスタンスの割引が組織全体で効く(第 12 章)。

図 11-5 要件の語からストレージのコスト対策を決める
図 11-5 要件の語からストレージのコスト対策を決める
問題文に出る語答えの方向
アクセス頻度が読めないS3 Intelligent-Tiering
90 日後にはほとんど読まないライフサイクルで Glacier 系へ
ほぼ読まない・最も安くGlacier Deep Archive
再作成できる派生データ1 ゾーン − IA
30 日以内に消えるデータ標準のまま(IA は最低保管期間で損をする)
身に覚えのない S3 の料金未完了のマルチパートアップロードを削除するルール
EBS を同じ性能で安くgp2 → gp3
使っていないのに課金される未アタッチのボリューム・Elastic IP・古いスナップショット
大きなデータを配りたいが転送料は払いたくないリクエスタ支払い
部署ごとに費用を分けたいコスト割り当てタグ
予算を超えたら知らせたいAWS Budgets

シナリオ演習

ログを S3 に保管している。直近 30 日はよく参照するが、それ以降はほとんど見ない。7 年間の保管が義務づけられている。

補足

答え:ライフサイクルルールで、30 日後に Glacier Flexible Retrieval、90 日後に Glacier Deep Archive へ移し、7 年後に削除する。

最初から Deep Archive に置くと、直近 30 日の参照に 12 時間かかってしまう。逆に標準のまま 7 年持つのは高い。

シナリオ演習

請求を見ると、どのバケットにも見当たらないストレージ料金が計上されている。

補足

答え:未完了のマルチパートアップロードの断片が残っている。ライフサイクルルールで自動削除を設定する。

失敗した分割アップロードの断片はオブジェクトとして一覧に出ないが、課金は続く。バージョニングの古い版も同様に見落としやすい。

この章のまとめ

  1. 読む頻度が読めないときの S3 クラス
  2. 標準 − IA と 1 ゾーン − IA の最低保管期間
  3. Glacier Flexible Retrieval の最低保管期間
  4. Glacier Deep Archive の最低保管期間
  5. 最低保管期間より早く消すとどうなるか
  6. 1 ゾーン − IA に置いてよいデータ

この章の根拠

AWS Certified Solutions Architect - Associate (SAA-C03) 試験ガイド

最終確認 2026-10-04 / 対応バージョン DEA 2026-05-04 改訂版